譲渡制限株式とは?譲渡制限株式の全知識まとめ

譲渡制限株式は、言葉通りに株式の譲渡に制限が設けられている株式のことを言います。

あまり意識していない方も多いかもしれませんが、実は日本の多くの会社は、譲渡制限株式を定款に設けています。しかし、具体的には譲渡制限株式はどのようなメリットがあるのか、また注意すべきポイントは何かを把握できてない方も少なくないでしょう。

そこで今回は、譲渡制限株式の仕組み、メリット、デメリットなどについてまとめました。ぜひこちらの記事を参考に、譲渡制限株式について理解しておきましょう。

1、譲渡制限株式とは?制限できる範囲は?

譲渡制限株式とは、言葉通りに譲渡に制限が設けられている株式のことを言います。

なぜ株式に譲渡制限をつけるかと言うと、それは株式を自由に他の人に譲渡ができたりすると、会社を危険にさらわれるリスクがありますので、会社を守るということで会社法では譲渡制限株式の発行を認められています

(1)全部の株式

譲渡制限株式の制限範囲については、一般的には会社の定款に全部の株式に対して制限するのがほとんどです。

定款には下記のような文言にて記載されています。

当会社の株式はすべて譲渡制限株式とし、当会社の株式を譲渡により取得するには株主総会の承認を得なければならない。

(2)一部の株式

一方、全部の株式ではなく、一部の株式のみ譲渡制限を決めることもできます。

一部の株式に譲渡制限を設定するには、会社として複数の株式を発行する必要があります。また、譲渡承認株式の発行可能株式数も明記する必要があります。

2、譲渡制限株式の会社の定義は?

譲渡制限株式の会社は、定義上では公開していない「非公開会社」になります。一方、上場している会社は、株式の売買が自由に公開しているので、「公開会社」になります。

しかし、非上場会社の中で、1株でも譲渡承認株式を発行していれば、会社法上では公開会社と認められています

3、譲渡制限株式の9つのメリット

では、譲渡制限株式を発行することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。

以下にて詳しくみてみましょう。

(1)自由に株式譲渡ができないため、第三者に乗っ取られるリスクが低い

譲渡制限株式は、株式の譲渡は株主総会にて承認を得る必要があるため、会社にとって不利な株式譲渡を防ぐことができ、第三者に乗っ取られるリスクが低いと言えます。

(2)役員の任期を10年に延長することができる

一般的には会社の役員の任期は2年になります。譲渡制限株式の会社は、定款に特別扱いとして役員の任期を10年まで延長することができます。

役員が長くいられることによって、会社も安定すると言えるでしょう。

(3)取締役会や監査役はなくてもいい

公開会社は取締役会、監査役を設けることが必須になっていますが、譲渡制限株式の会社は設定する義務がありません。

取締役会や監査役を設定しなくていいとのことで、取締役会の開催費用、監査役に支払う報酬などのコストを節約することができます。

(4)株主総会の招集手続きは簡単

通常の株主総会の招集手続きは、開催2週間前に書面にて通知しなければいけないですが、譲渡制限株式の会社は、開催1週間前に通知すれば大丈夫です。手続き上では非常に簡単と言えるでしょう。

(5)株主から請求がない場合は株式は発行しなくていい

譲渡制限株式の会社の場合、株式の発行は義務ではありません。株主から請求がなければ、株式を発行しなくてもいいです。

(6)計算書類の「注記」を簡略化することができる

譲渡制限株式の会社の場合、計算書類の「注記」を簡略化することができます。

一般的には「注記」には19個の項目がありますが、譲渡制限株式の会社の「注記」は下記6個の項目を記載すれば大丈夫のようです。

  • 重要な会計方針に関する注記
  • 会計方針の変更に関する注記
  • 表示方法の変更に関する注記
  • 誤りの訂正に関する注記
  • 株主資本など変動計算書に関する注記
  • その他の注記

(7)定款に「特別扱い」を定めることができる

譲渡制限株式の会社の場合は、定款に「特別扱い」を定めることができます。

その特別扱いは、上記の

  • 取締役会や監査役はなくてもいい
  • 役員の任期を10年に延長することができる

などが含まれます。

(8)相続税などの税金をおさえるために、会社から株式を買い取りやすい

事業承継など会社を後継者に引き継いてもらう時に、生前の場合は贈与税が発生し、相続の場合は相続税が課税されます。

実は事業承継する時の贈与税や相続税が高く、支払えない後継者が多いのも一つの問題になっています。

譲渡制限株式の会社の場合は、会社が後継者の支配権に影響でない程度の株式を売却して、その代金で税金にあてることができるのです。

事業承継する時の税金について詳しくは「事業承継とは?事業承継で悩まされている経営者が知っておくべき7つのこと」を参照にしてみてください。

4、譲渡制限株式の3つのデメリット

譲渡制限株式の会社にはメリットが多くありますが、デメリットがないわけではありません。

以下にて譲渡制限株式の3つのデメリットをみてみましょう。

(1)相続時に「売渡請求」が議決されれば、会社が乗っ取られるリスクがある

譲渡制限株式の場合、後継者に対して「売渡請求」をすることができます

売渡請求は株主総会にて特別議決する必要がありますが、しかし、売渡請求された後継者はこの特別議決に投票する権限がないため、株主総会で売渡請求が決議された場合、本来の後継者にはどんなに多く株式を所有していても、売渡請求を受け跡継ぎの座を他の人に渡ってしまいます

上記のような事態にならないため、

  • 定款に売渡請求の定めを記載する
  • 自分の株式だけ譲渡承認株式にする

などの方法が挙げられます。詳しくは司法書士に相談されるといいでしょう。

(2)「株式買取請求権」に備える必要がある

譲渡制限株式は株主が株式を譲渡する時に、会社に対して譲渡を認めてくれと「譲渡承認請求権」があります。それと同時に株式の売却を認めない場合、「自分の株式を会社が買ってくれ、もしくは買ってくれる人を指定して」と株式の「買取請求権」を出張することができます。

つまり、譲渡制限株式は譲渡する時に承認が必要ですが、株主は株式を譲渡する行為は違法行為ではありません。

従って、万が一株主から「買取請求権」を実行された時に備えて、株式を買取る資金の準備しておくといいでしょう。

(3)「決算公告」する必要がある

譲渡制限株式会社の場合、決算公告をする必要があります。手続きとしては会計的手続きとなりますので、忘れずに行うようにしましょう。

5、譲渡制限株式の譲渡価格を決める3つの方法

では、実際に譲渡制限株式を譲渡する時の譲渡価格はどのように決められるのでしょうか。

具体的には下記3つの方法が挙げられます。

(1)譲渡と譲受の両者で決める

一番最初のステップとして、譲渡と譲受の両者で決める方法です。

株式の計算で定められた方法で算出しますが、両者の協議で売却価格が決められなかった場合、会社法の供託価格にするか、裁判所に申し立てを立てるかになります。

(2)会社法の供託価格で決める

譲渡と譲受の両者で株式の譲渡価格の協議の調整ができず、裁判所に申し立てもしない場合、会社法の供託価格で譲渡価格を決めます。

(3)裁判所に申立てして決める

譲渡と譲受の両者で株式の譲渡価格の協議の調整ができず、裁判所に申立てして決める方法もあります。

この場合、裁判所への申請手続きは非常に煩雑になっていますので、弁護士などの専門家に問合せするといいでしょう。

6、実際に譲渡制限株式を譲渡する手続きは?

最後に、実際に譲渡制限株式を譲渡する手続きをみてみましょう。

大きく下記の流れになります。

  1. 会社に株式譲渡の承認請求をする
  2. 取締役会または臨時株主総会にて承認してもらう
  3. 2週間以内に承認の通知をする
  4. 株式譲渡の契約書を締結する
  5. 譲渡・譲受の両者にて「株式名簿」の更新請求をする
  6. 「株主名簿記載事項証明書」の交付

まとめ

今回は譲渡制限株式について書きましたが、参考になりましたでしょうか。

非上場会社の場合、一般的には譲渡制限株式になっているにも関わらず、認識されていない経営者も多いのではないでしょうか。こちらの記事を参考に、再度定款などにて自社の株式について確認してみましょう。

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八木チエ

八木チエM&A INFO プロデューサー

投稿者プロフィール

大学卒業後、7年間IT会社の営業を経験し、弁護士事務所に転職。
弁護士事務所で培った不動産投資の知識を活かし、業界初の不動産投資に特化したメディアを立ち上げ。2018年に株式会社エワルエージェントを設立。不動産投資「Estate Luv」、保険「Insurance Luv」などのメディア運営やメディアのコンサル事業に特化。
M&A業界が盛んになった今、M&Aの情報を正しく伝えたい、もっと多くの人にM&Aの魅力を知ってもらいたいと思い、M&Aに特化したメディア「M&A INFO」を立ち上げ。より有益な情報を多く配信している。

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